©佐賀崎しげる・鍋島テツヒロ/SQUARE ENIX・「片田舎のおっさん、剣聖になるII」製作委員会
「片田舎のおっさん剣聖になるII」は弊社は1期から引き続き、プロップ3DCGモデリング・アニメーション制作で参加させていただいております。
1期は世界的にも人気だったようで、なんとamazonPrimeVideoのランキングで同時期の「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」を大きく上回る視聴成績を挙げていたそうです(https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/982253c1235efa6f1bf33f0d94af8067c693b932)。
この作品では殺陣のアクションシーンがひとつの見せどころで、そこはYAMATOWORKS(https://yamato-works.com/ )さんが担当しており、いつも素晴らしいカットを制作されていますが、我々の担当は主に「馬車」の3DCG制作です。
馬車というものはアニメで頻繁に3D化されるプロップのひとつです。3DCGと無縁とも思えるアニメでも使われることが多いです。なぜか。「アニメーターが手描きで馬と馬車を描くのは大変だから」です。
また馬車が登場するような世界観(異世界モノ、令嬢モノ?)のアニメの場合、頻繁に同じ馬車が登場することが多く、3DCG化することでクオリティの安定と全体作業量の軽減が見込まれます。
馬車CGを作るにあたっての注意点
そんなわけでよく見かける、アニメにおける馬車CGの作り方にはいくつかポイントがあります。それをご紹介しましょう。
こんな事書くのは私くらいでしょうw世の中のアニメ馬車CG担当者は刮目せよw
1.車輪の接地問題
よくあるカットなのですが、車輪のみのアップのカットを想像してみてください。
馬車が3Dだと、背景となる地面は2D(描かれた大判)の引きで、スピードをコマあたりのミリ数で指示される事が多いです。その場合3Dでポリゴン板を床(地面)にして置き、実際に動かして2D指示に合わせた上で、その板に車輪の回転を合わせる形で回転を決めないと、車輪の接地問題をクリアできません。
また回転を地面に合わせても、今度はスポークの数と角度関係によって「逆回転してるように見えてしまう」という問題がよく発生します。
高速回転するクルマのCGならごまかせる事が多いのですが、低速の馬車ではそうは行きません。
馬車(背景)の進行スピードは変えられず、しかし回転速度を調整しないと逆回転に見えてしまう状況、、
なんとか速度と回転の折り合いを取ってごまかすしかありません。
2.馬の歩幅問題
馬車での馬の歩き方は普通の歩行(常歩「なみあし」と言います)がほとんどですが、よりゆっくり進む時、あまりペース(歩調?)は変わらず歩幅だけが短くなるんですよ。
カッポカッポカッポカッポ、、みたいな歩き方です。その音のリズムはあまり変わらず、歩幅で調節します。
歩きアニメーションというのは一度作ってしまえば、どんなスピードでも成り立つと思いがちですよね。
もちろんある程度は成り立ちますが、スピードによっては歩幅のほうを変える必要が出てきます。
でないとクソゆっくり、スローモーションで動いているようなアニメーションが出来上がってしまいます。
馬車の移動量は演出上決まっていて、かつ足の接地をずらす訳には行きません。
この「歩幅を変える」と言うのはCG作業上は実は面倒なのです。
アニメーションをもう1パターン作るのに等しい行為なので。
「片田舎のおっさん」では2種類の歩行アニメーションを使いました。
普通の常歩と、もっとゆっくりで、かつ足のリズムが変わらない歩き方です。
3.御者
馬車を操る人、御者はだいたいモブ扱いですが馬車が3Dなら御者も3Dにしないわけにも行きません。
メインキャラクターでもないので設定画がしっかりなかったりする。
そして御者のリグってちょっと面倒なんです。だいたい手綱持ってて、それが馬に繋がってますよね。
なのに大抵リグ制作時にコンテが全てあるわけではないので、その御者がその演技を実際にするかどうかは、かなり怪しい。
だから作っておいた方がいいんじゃないか、、という不安がリグ制作者の頭をよぎります。
4.レイアウト上のウソ
完成画面ではわかりにくいのですが、2D先行で制作をする事が多い馬車の場合、3Dではありえないレイアウトの指示が上がってくる事が良くあります。
馬車本体を優先してカメラを決めると馬の首が映らない。馬の頭が映らないと馬車っぽく見えない。
演出上そうしたい気持ちは理解できるので、馬だけ無理やり移動、なんてことはしょっちゅうあります。
パース自体がおかしい時もあります。
せめて透視図法的に矛盾のないレイアウトにしてくれれば良いのですが、明らかに成り立たない場合があります。
そういう場合、時には馬車自体を変形させてしまう事もあります。
良い馬車、悪い馬車
馬車CGに関わるようになると、何かと他のアニメの馬車、そしてその出来が気になってしまいます。
私が3D馬車でつい見てしまうポイントは
・足や車輪の接地が合っているか
・レイアウト上、また立体上、不自然な配置になってないか
・影の有無とその馴染みかた
・長尺のカットで御者にもアニメーションがついていたり、馬にも歩き以外の演技があったりするとポイントUP
こんなところですが、演出の優先順位上「あればOK」「動いてたらOK」の場合も多いので、あまり変に主張せず物語に溶け込んでいれば良いか、、とも思います。
そんな作り手が居る事も頭のスミに置いてアニメを鑑賞して頂ければ、よりアニメを楽しめ、、ないかw
という訳で、馬車CGならZ-FLAGにお任せくださいませ。
いま放送中の2期「片田舎のおっさん剣聖になるII」も、引き続きよろしくお願いします!
