そもそも私は宇宙好きでもありまして、小学生の頃から米ソ宇宙開発競争の本や、カール・セーガン「COSMOS」の本を読んだりTVを観たりしておりました。
しかし初代「はやぶさ」については、イトカワからの帰路につくまで、まったく知らなかったのです。
噂を聞いてネットをまさぐってるうちに、ニコニコ動画で沢山のはやぶさ関係の動画を見て、「こんなに感動的なことが起こっていたのか!」と大感激してしまいました。
当然、動画関係はすべて観ました。
プラネタリウム番組「HAYABUSA BACK TO THE EARTH」を観ました。素晴らしい出来でした。家族で見ました。泣きました。
2010年に帰還したときは、もちろんパソコンとスマホにかじりついて酒を呑みながら事の成り行きを見守りました。
その後作られたはやぶさ映画3つも、すべて劇場で観ました。それぞれに愛がありました。有名どころのCGプロダクションが名を連ねてました。
そして数年。
このお話を頂いた時、これは大変なことになったと思いました。
はやぶさ2のハイクオリティCGモデルは既にいくつか世の中に出ていました。
公式にも使われている池下章裕氏のもの、Go Miyazaki氏のもの、そして「HAYABUSA2 RETURN TO THE UNIVERSE」で作られた、上坂浩光氏率いる有限会社ライブさんのCGモデル。
どれも素晴らしい出来ばえです。
我々はそれらに負けないものを作らなければならない。いや作らなくてどうする。
彼らほど本職じゃないけど、できる限りのことはしてみせる。
スタッフに思いを語り、チェックにも力が入りました。
いろんな資料を調べているうち、我々にはひとつだけ有利な点があることに気づきました。
先人達のはやぶさ2はあくまで発射前の「想像」のモデルであり、完成された実物を資料として見て作られたものではない、という点です。
その写真(フライト寸前、ロケットに設置される前の実際の写真)は番組からの資料とネットから、かなり得ることができました。
これらの資料により、現在飛んでいるはやぶさ2には、太陽電池パドルの支柱に、おそらく配線の固定用に、白いテープ状ものがいくつも巻かれている事がわかりました。他のCGモデルでは表現されていない部分です。
ウチが制作しているモデルには迷わずそれを付けました。
また、各パーツのサーマルブランケットにある”しわ”の形状も、できるだけ本物の写真を参考にして似せた形状で作っています。”しわ”は打ち上げ後も、そう変わることはないでしょうから。
そうしてCGモデルが造られました。
もちろんいくつかのカット制作にも参加しました。
クレーター制作は、今考えれば広大な平原に作ってましたね。実際のリュウグウはもっとごつごつしたところでした。それらのカットはもう、今後の放送には使われないでしょう。
2020年初頭の現在、はやぶさ2は、地球への帰路の途上にあります。
東京オリンピックが終わり、はやぶさ2が帰ってくる頃、我々は何をしているでしょうか。
私は生きているでしょうか。相変わらずCG仕事をしてるでしょうか。
また、このCGモデルで作られた映像を再び私は、見ることができるでしょうか。
少しでも、自分もかつてそうだった、天文少年の記憶に残るものを残したい。
そんな思いで制作しました。
このチャンスをくださったクライアントの皆様、ありがとうございました!