CGじいさんシリーズvol.2 「CG検定に出るアナログカメラ知識」時代を錯誤したCGじいさんがアナログカメラ知識を今の若い人にわかるよう語ってくれます

Nikomat FTN

vol.1に続き、ただいまご紹介にあずかりました、CGじいさんでございます。

自分は大東亜戦争以前から3DCGを仕事として作り続けて来たのでありますが、いまCG検定を受ける若きCGクリエイターやその卵である皆様におかれましては、この検定に見事合格、そして立派な日本人としてご活躍していただく為に、自分の知識が役立つ事がきっとあるとの思いに至り、このブログに残そうと思った次第であります。

さて、CG検定では時代遅れの用語も使われていますが、もちろん有用かつ普遍的な知識もあります。そのひとつが、カメラについての基本的知識です。

ナウなヤングの皆様が使うカメラはデジタルカメラかと思います。いまスマホやデジカメは世間にあふれていますが、露出・ピント・絞り・シャッタースピードがすべてマニュアル操作のスチルカメラなどは先カンブリア紀以前のシロモノでありますから、若い皆さんは手に取る事すら難しいでありましょう。しかしこのアナログカメラを操るために必須の知識が、CGクリエイターとなると役立つ場合があるのです。

現代の物理ベースのレンダラー(PhysicalBasedRenderer略してPBR)では実際の世界や明るさまでシミュレートしますので、この辺の知識を抑えておくと、良い結果を素早く得るための手がかりを得ることができます。

VrayではPhysicalCameraというカメラ設定があり、そこにはそれらのパラメータがしっかり存在しております。その意味が分かってないと、値をどうすればどのような結果が得られるのかの想像がつきません。コンピュータなのにフルオートという訳にはいかないのです。知らなければ、無闇にテストレンダリングを繰り返し、こりゃワカランということになってしまいます。実戦において「できません」では撃墜されてしまうのです。別レンダリングして適当にボカしゃいいと思っていると、痛い目を見ます。是非とも理解してもらいたいところです。

それではカメラの基本的な仕組みを説明いたしましょう。

カメラにはレンズ・絞り・シャッター・感光面が存在し、外からこの順番で光が通ってきます。

昔は感光面の位置にフィルムがありましたが、デジカメではCCDに取って代わられています。カメラの目的は写真を撮ることですから、レンズでピントを合わせ、絞りで光を適切に調節した上で通し、シャッターを適切な瞬間だけ開いて感光面に感光させるのがその目的です。それらの装置のバランス調整で適正な露出を得るのです。これらの操作をフルオートでやってくれる最新鋭のデジタルカメラも、戦前のスチルカメラも、この基本的な仕組みだけはまったく変わらないのであります。

それらの装置がやっていることの中で、レンズが行うズームとピントはPhysicalでなくとも皆さんがすでに判っていることと思います。CGでは普通、画面に映るすべての物体にピントが合います。マジメにボカしを入れてレンダリングするのには計算量が必要です。またズームはすなわち皆さんがカメラで使うfocalLengthの値です。

では露出に影響する、残りの3つの値について解説いたししましょう。

シャッタースピード 

シャッターはカメラについている光の量を調整するしくみです。シャッターが開いている時間で調整します。これは感光面への光の量とモーションブラーに影響します。単位は 1/200秒 とか 1/30秒とか。値が小さいほど速いので、光の量が減りますがモーションブラーも減り、動体はよりブレないものになります。VrayのPhysicalCameraではこの分母の数字部分がパラメータになっているので、数字が大きいほどシャッタースピードは速く光の量が減り、モーションブラーは少なくなります。

絞り

レンズに付随している、光量を調整する為のしくみです。完全に開いていればレンズに入る光をすべてシャッター側に通しますが、閉じていく(F値が増える)ほど光の量を減らします。F値の設定は光の量と被写界深度(ピントが合う範囲)に影響します。絞る(光の量が減る)ほど被写界深度は深く(広く)なり、ピントの合う範囲が広がります。逆に背景などをボカしたくなったら被写界深度を浅く(狭く)する、つまり絞りを開けるべきです。そうすると当然光の量が増えるので、別の要素で調整する必要が出てきます。同じ光量にするためには絞りを絞っていくほど、シャッターが開いている時間を延ばす(シャッタースピードを遅くする)必要があります。

ISO

本来はフィルムに光が当たった時どれだけ反応するかの度合い、つまり感度を示すものです。感度が高ければすぐに感光するので暗い世界でも絞りやシャッタースピードに余裕ができます。しかし感度の高いフィルムは、ざらざらしたグレインノイズが目立ちやすい傾向にあります。昔はISO(イソ)でなくASA(アーサー)と呼ばれていましたが同じ事です。標準が100で、感度高めのフィルムとしてASA400のフィルムがよく売られていました。

グレインノイズの話が出ましたが、VrayではISOを変えてもグレインノイズが強まることがありません。したがってCGで最も楽に明るさを調整できるのは、ISOだと言えます。

ちなみに2020年後期のCGクリエイター検定エキスパートでは、絞り値をF2からF22まで下げた場合の光の量が何分の一になるかを計算できないと解けない問題が出ました。かなり難易度の高い問題だったのではないでしょうか。

できるだけ自分の文章で長々と書いては来ましたが、、ググってみたところ、こちらを見ていただくのが最も直感的に理解できるのではないかと思います。

カメラ初心者におすすめの絞り・シャッタースピード・ISO感度の早見表!図解で見れば簡単にわかる

要はこちらのページにある画像と、書かれている事を理解しろという事でした。お粗末でございます。

昔話にお付き合い頂きますと、自分は子供の頃鉄道の写真を撮るのが好きでありましたから、写真機の性能と使う人間の技術の差によって、写真の出来が大きく左右される事を幼い頃から知っておりました。一眼レフは憧れの機械であり、速いシャッタースピードで特急列車をバッチリ止めて写す事に憧れを持っていたので、自然と写真周りの仕組みを覚え、そしてそれが今でも役に立っています。

おわかりいただけましたでしょうか。「増える酒量に減る寿命」「胸に愛国 手にマウス」の精神で戦っていた自分ではありますが、21世紀の日本CG業界の未来のため、日夜努力邁進されている若い皆さんに、私のような老いぼれの知識が役に立てれば望外の幸いであります。

長くなりましたがご清聴、ありがとうございました。

Z-FLAG

東京の神保町のCGプロダクションです。日本一を目指して活動中

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